行きにくい方から行きやすい方へ、楽な方へからだを動かす――。
たったそれだけのことでからだの硬さや痛みがとれます。
だれでもできるこの方法を使わない手はありません。
●楽なほうへ
橋本敬三さんが作り上げた 「操体法」 という方法を、ご存知の方も多いと思います。原理をひとことでまとめると、「行きにくい方から行きやすい方へ」。
この一行で終わりです。あるいは、もっと短くまとめると、「楽な方へ」。
例をあげてみましょう。読者の右手の平を上向きにしてみてください。 そして手首を手前と向こうに曲げてみます。どちらの方が曲がりやすかったでしょうか。
私の場合は、手前に曲げるのは抵抗があり、向こうに曲げるのはラクです。こんな場合、
まず手首を抵抗がある方にまげて、そこからゆっくりと向こうへ倒して行きます。
そうして6割ほど倒したら、そこで力を抜いて、いっきに向こうへだらりと倒してしまう。
これを3度ほど繰り返します。そしてもう一度、手首を手前に曲げてみる。
手首の抵抗感がすっきりと取れて、ラクになりませんか? これが、からだのどの関節にも応用できます。そっとやれば、指の関節にさえ使えます。
操体法の本を読むと、いろいろ書いてありますけれど、煎じ詰めると操体法は、このようなことの応用だと思います。
ですから、整体の技術について何もしらない人が、ともかく痛みを止めたいと思ったら、
操体法がいちばんだと思います。
大仏池のほとりにて
●柔軟な考え方が大切
ところが、このカンタンなことで、どれだけの成果を挙げるかとなると、大きな差が出てきます。
この方法を、どの関節に使うか、これが鍵になる。そして、もう一つは、この方法が使えない時、
使ってもあまり効果が出ない時にどうするか。その対処法を持っているかどうか。これがポイントです。
操体法がだれにでも使えるやさしい方法だからといって、これで例えば慢性の腰痛を即座に直すことができるか、
となると難しいことが多い。長く続いたしこりが操体法ですぐに取れるかといえば、それが難しいからです。
●慢性腰痛
慢性の腰痛となると、からだの筋肉がカチカチになっていることが多い。押せども引けども、
こんなのをすぐに柔らかくするのは難しい。しかも痛みがなくなっていることが多いので、
どこが悪いのだかよく分からないことも多い。
立ち上がった時などにさし込むような痛みがあると訴えられる方に、あちこち押してみても、
どこも痛くないとおっしゃる。この場合は、原則にもとづいて、 腰まわりの歪みをとれるだけ取り除きます。これでかなりよくなるのは、確かなんですが、
まだ奥の方に痛みの芯がある。
操体法が威力を発揮するのは、こういう時です。そうして、 ひざ・股関節などに操体法を5〜6回使うと、
痛みがとれる事があります。
何でも操体法で解決すると考えるのではなく、ゆるみにくい慢性の硬さを他の方法でゆるめ、
それから場所のはっきりしない症状に対して操体法を使うのが、この場合の成功の鍵す。
一つの方法を過信しては失敗するが、別の道もあると知っているとうまく行くことが多い。 別の道にも通じておくこと。これが教訓です。